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年次大会報告
平成29年度日本写真芸術学会年次大会報告

日本写真芸術学会平成29年度年次総会

平成29年度日本写真芸術学会年次大会が、6月3日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午後1時より通常総会、午後2時より研究発表会、午後6時より懇親会が開催されました。
通常総会は内藤会長が議長をつとめ、内藤議長より上田耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項ではまず田中仁理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事12名、評議員4名、監事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
研究発表は秋元貴美子理事、上田耕一郎理事、佐藤英裕理事を座長にそれぞれ論文口述1件、調査口述1件の計6件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び概要は以下のとおりです。
1.論文口述「写真通信教育の現状と今後」
東京工芸大学芸術学部写真学科 田中 仁
写真教育に関わる通信教育の歴史と現状を紹介されました。さらに写真通信教育は現在、大阪芸術大学と京都造形芸術大学の2校のみが行っているが、その学習方法や特色ある授業形態、受講者の特徴、両校の特色や差異などを詳細に報告され、最後に今後の展望まで発表されました。
2.調査口述「諸外国の写真の教育事情─アメリカ合衆国編─」
日本大学芸術学部写真学科 鈴木 孝史
アメリカ合衆国の州立あるいは私立の総合大学および単科大学22校の写真関連講座(実習、理論)、美術館が併設されているか、寄付金に関わるシステム、写真作品収集、所蔵についてなどの調査報告をとおし、日本との差異を浮き彫りにした発表をされました。
3.論文口述「レフ・マノヴィッチのニューメディア論とその影響─
現代写真文化への応用可能性─」
東京工芸大学大学院芸術学研究科 石橋 賢明
デジタル時代における写真論を考察するには従来どおりにはいかない。それゆえコンピュータが人間文化に与えた影響を語るメディア理論家・アーチストであるマノヴィッチのニューメディア論を考察し、マノヴィッチ理論の要点、及びその理論がメディア論と写真論に与えた影響、重要性について発表されました。
4.調査口述「山縣有朋の笑顔写真発見」
ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
山縣有朋5代目の子孫、山縣由紀子氏所蔵の写真を調査した結果、山縣が晩年に笑顔で写った一枚を発見した報告であった。当時は公の写真では笑顔を見せないのが通例であったなど、笑顔の写真にまつわる歴史的報告も含め、山縣の笑顔写真が撮られた経緯などの調査報告を発表されました。
5.論文口述「戦後における日本ファッション写真の歴史─1946〜56年を中心に─」
日本大学大学院芸術学研究科 細川 俊太郎
発表者が考えるファッション写真の定義を最初に明確にし、それを踏まえ雑誌『装苑』で活躍した写真家たちの作品を中心に1946年〜1959年のファッション写真を欧米の同時代の作品と比較考察し、日本のファッション写真の特徴を述べた。更にそこから見えてくる文化、社会性にまで言及した発表をされました。
6.調査口述「シリーズ展「夜明け前知られざる日本写真開拓史」を終えて」
東京都写真美術館 三井 圭司
本年3月〜5月の東京都写真美術館における「夜明け前知られざる日本写真開拓史総集編」は、平成19年から2年に1回、合計4回の写真展の総括として開催されたものである。これら写真展開催のために行われた調査や新しい展示方法も含め、古写真研究の成果と現状、そして今後の課題について発表されました。
年次大会終了後、会場を東京工芸大学食堂プレイスへ移し、懇親会を行いました。上田耕一郎理事の司会進行により和やかな雰囲気の中で参加者は情報交換などをしながら楽しく有意義な時間を過ごすことができました。
今年度は、残念ながら日本写真芸術学会賞の授与者がおりませんでした。しかし研究発表は、教育に関するものが2件、表現に関するものが1件、歴史に関するものが2件、そして発見の報告が1件と内容に富み、多様な分野での発表が充実していました。また本年度は、昨年の写真プリントセミナーに引き続き写真プリント研究会、関西支部では写真研究会に加え第1回シンポジウムも予定されています。年次大会の研究発表同様、研究会等への参加、学会誌への投稿がさらに増え、学会が活性化し充実したものとなり、次回は多くの賞を授与できることを願っております。

(文:実行委員長・西垣仁美、写真:細川大蔵)

 

関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部 第二回研究会 開催報告
去る平成29年3月4日(土)午後6時より、ビジュアルアーツ専門学校大阪校にて、2016年度に正式発足した日本写真芸術学会関西支部による第二回研究会を開催しました。テーマを「テグフォトビエンナーレ2016報告:芸術監督の経験を通して写真祭を考える」と題し、今回のテグフォトビエンナーレにおいて芸術監督を務められた、本学会理事の吉川直哉先生にご講演いただきました。
当日は、会員と一般聴講合わせて25名ほどのご参加がありました。司会進行は、中山博喜会員(京都造形芸術大学)が務め、講演と質疑応答を含めて約2時間半の会となりました。
前半の講演では、テグフォトビエンナーレの歴史から始まり、実際に芸術監督を任命されるまでの経緯についてお話しいただきました。1980年代に初めて韓国を訪問した時から着実に築き上げてきた縁が今回の任命につながったというお話の中では、芸術監督を引き受けた最も大きな理由に「チャレンジ精神」を挙げられ、国境を越えて積極的に展覧会に参加してきた実体験についてもお話しいただくなど、モノづくりの根幹に触れる場面もありました。
次に、芸術監督という役割について、運営事務局の組織構成を解説していただきながら、キュレーターや出品作家の選出方法、そして予算の割り振りにいたる仕事の詳細についてお話しいただきました。その中で、本ビエンナーレのテーマとなった“We are from somewhere, but where are we going ?/我々はどこから来て、どこへ行くのか?”を決定する際、運営事務局(社団法人 _テグフォトビエンナーレ)から「問いかける形のテーマはこれまでにない」との反発があったと言い、「これまでにないからこそ、やる意味がある」という意志のもとで、事務局と幾度となく意見を交わし合うことによって、ようやく決定に至ったというエピソードをご紹介いただきました。
更に、展示作品を紹介する場面では、それぞれの作品の取り扱い方法やテーマ内容についての数々の興味深い苦労話が披露され、多種多様な意見を短い準備期間の中で和協させるに至ったドキュメンタリーさながらの報告に、会場から感嘆の声が上がりました。
後半は、会員を始めとする会場の皆さんと吉川先生との間で、海外で作品を発表することについての意見交換がなされ、その後の質疑応答でも活発な議論が行われました。
1月に芸術監督の声が掛かってから9月の開催までの含蓄に富むエピソードや各展示作品についての考察など、今回の研究報告は、アジア地域における写真文化の方向性を捉え直す得難い機会になりました。

(文:理事・関西支部・中山博喜)

 

写真プリントセミナー報告
「写真プリントセミナー」について



日本写真芸術学会創立25周年記念イベントとして、平成28年11月25日に、東京工芸大学中野キャンパス芸術情報館1階メインホールにて、「写真プリントセミナー〜新しいプリント時代の到来のために〜」を開催致しました。
写真術発明以来、今日ほど写真表現が活発な時代はなかったのではないかと思います。そして今、写真は身近なコミュニケーションのツールとなったばかりではなく、 アートの重要な表現手段の一つとなったと言えるでしょう。発表の場や方法も、美術館やギャラリー等でプリントを展示する方法やインスタレーション、プロジェクターやディスプレイを利用した上映、雑誌や写真集等の印刷媒体、ウェブサイトの利用等、多様となりました。このように発表の場や方法が広がったことに伴い、写真表現そのものが変化してきていると共に、その評価軸も多様になりました。一方、こうした時代的な変化に伴い、写真表現において、最も基本的かつ写真作品の根源というべきプリントが疎かにされる傾向があることも見逃すことができません。
今回のセミナーでは、銀塩写真の素晴らしさはもとより、インクジェットプリントの可能性、古典印画技法の活用の意義等、多岐に渡りながら、写真家、美術館学芸員、ギャラリー、ラボ、カメラメーカー等、様々な立場から、写真表現とプリントの今後について語って頂きました。また、ディスプレイメーカー、プリンターメーカー、用紙メーカー、ラボ等にブースを出展して頂きました。

(写真プリントセミナー実行委員長 吉田成)

開催報告

午前9時50分に内藤明会長の開会の挨拶からスタートし、セミナー開催の目的をセミナー実行委員の高橋則英副会長(実行委員長代理)から説明されました。
引き続き行われた講演は次の通りです。

講演1 「銀塩を超えたデジタルプリント」 
  塚原 琢哉/写真家
銀塩写真からスタートし40年前からデジタルに移行して続けられた60年にわたる制作の過程が作品を投影しながら発表されました。
講演2 「 プリント作品を収集・保存することについて─東京都写真美術館の場合」 
  藤村 里美/東京都写真美術館学芸員
日本/海外の写真美術館の系譜から東京都写真美術館の成り立ちと収集・保存の現状と今回のリニューアルの内容と今後について発表されました。
講演3 「 デジタルフォト時代のプリントの重要性〜カメラメーカーの立場より〜」
  後藤 哲朗/株式会社ニコン映像事業部後藤研究室室長
自身の写真・カメラとの関わり合いからカメラメーカーとしてのニコンの考え方と発展の状況、今後のプリントの有用性について発表されました。
以上で午前の部が終了し、お昼休憩に続いて企業ブース見学が行われました。参加企業はEIZO株式会社、エプソン販売株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、株式会社写真弘社、株式会社ピクトリコ、株式会社堀内カラーでした。各社の代表機材、材料や技術が一同に展開されて盛況でした。
午後から
講演4 「 デジタル革命の進行と写真マーケット」 
  福川 芳郎/ブリッツ・インターナショナル代表
2000年代以降のアート写真におけるデジタル化の流れとアート市場の変化や現代アート市場の影響、今後の動向予測などが発表されました。
講演5 「時を経ても、物として存在する意義─銀塩写真の魅力─」 
  広川 泰士/写真家
1980年代の作品から現在までの作品を投影しながら、自身の制作と物としての写真の意義から銀塩写真の存在の重要さを発表されました。
2度目の企業ブース見学に続いて
講演6 「オルタナティブプロセスの現在」 
  西丸 雅之/ PGI
オルタナティブプロセス(古典技法)の時代的背景から、各プロセスの特徴と代表的な現代作家の紹介と現状が発表されました。
講演7 「もう一度、〈見る〉ことの困難さとともに」
  新井 卓/写真家
ダゲレオタイプによる作品を提示しながら、マイクロ・モニュメントと名づけた写真の意味と在り方を検証しながら発表されました。
講演8 「作品の本質を引き出すプリントづくり」 
  松平 光弘/株式会社アフロ
プリンティングディレクターの役割とそのスキルを実践的な提示で発表されました。
最後に高橋則英副会長の閉会の挨拶でセミナーが終了しました。
つづく懇親会が会場を大学食堂「プレイス」に移して行われました。司会は上田耕一郎セミナー実行委員、乾杯とご挨拶を原直久前会長がおこない、講演者を交えた和やかな歓談が行われました。
学会創立25周年を記念して行われたセミナーでしたが会員、非会員、学生等、合計140名近い参加者がお集まり下さり、活発な意見交換、情報交換がされました。
最後に内藤会長の中締めの挨拶でお開きとなりました。

(文:セミナー実行委員 田中仁 写真:中里楓)

 

関西支部第一回写真研究会報告

本年度より正式発足した日本写真芸術学会関西支部による第一回写真研究会を9月10日(土曜)午後6時よりビジュアルアーツ専門学校大阪校にて開催いたしました。
大阪市新美術館建設準備室研究主幹の菅谷富夫氏を講師としてお招きし「美術館で写真アーカイブズを考える」と言うテーマでお話しいただきました。

研究会には会員、一般合わせて20名ほどの方にご参加いただきました。また東京より高橋則英副会長を始め、田中仁理事、西垣仁美理事にもご参加いただきました。
冒頭、吉川直哉理事より関西支部発足のお知らせと 今回の研究会開催主旨について説明させていただき、また高橋副会長よりもご挨拶をいただきました。
研究会は前半を講師によるレクチャー、後半を質疑応答として進行しました。講師の菅谷さんより、「そもそもアーカイブズの定義は何か?」と言うお話しから始まり、大阪市新美術館準備室を例に美術館の活動としての資料アーカイブズと作品収集の方針と現状についてお話しいただきました。

次に2013年に高知県立美術館に開設された石元泰博フォトセンターにおける「写真アーカイブズ」の事例を詳しくご紹介いただきました。その中で菅谷さんは美術館における写真の収集について、以下のことを課題と感じたのこと。
@資料か作品か
・ためし焼きと出品作 ポジとネガ 写真集
A 著作権管理
・石元フォトセンターでは2006年石元氏と高知県が著作権について贈与契約
B デジタル化時代のアーカイブズ
・発表形態の変化 マーケットとの関係(ヴィンテージ信仰)
・収集のデジタル化(作品なのか資料なのか)
以上を踏まえて
・美術館は写真アーカイブズをどうつくれるのか?
・美術館の写真アーカイブズは資料集積なのか、作品収集なのか?
と言う問いかけで前半を終了しました。
後半は前半の菅谷さんのお話しと問いかけに対しての質疑応答と意見交換の場となりました。会員、一般の方はじめ、高橋副会長、田中理事にも加わっていだき、活発な論議が行われました。もとより答えがすぐに出る内容ではありませんが「写真アーカイブズ」について考える誠に良い機会になったと考えます。
第2回研究会は、平成29年3月4日(土)午後6時より、ビジュアルアーツ専門学校大阪校にて、テグ・フォトビエンナーレ2016で日本人初の芸術監督を務めた吉川直哉理事より、「フォトビエンナーレにおける芸術監督の役割(仮題)」というテーマで開催したく準備をしております。詳細が決まりましたらまたご案内申し上げます。

(文:関西支部理事 村中 修)

 

学会NEWS No.71より
平成28年度日本写真芸術学会年次大会報告


平成28年度日本写真芸術学会年次大会が、6月4日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午前10時より通常総会、午前11時より学会創立25周年記念講演、午後1時より研究発表会、午後5時45分より学会賞授与式、午後6時20分より懇親会が開催されました。
通常総会は内藤明会長が議長をつとめ、内藤議長より秋元貴美子理事が書記に指名されました。報告事項ではまず上田耕一郎理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事11名、評議員7名、監事1名が選出されたことが報告されました。続いて、内藤明会長より理事会の承認を経て関西支部が設立されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
研究発表会に先立ち、本学会創立25周年記念講演として原直久理事(日本大学教授・前会長)による「写真の魅力─プリントの重要性と今後─」が銀塩、プラチナ作品やネガを実際に提示しながら行われ、多くの出席者の関心を集めました。
研究発表では吉田成副会長を座長に調査口述1件、作品口述1件、また西垣仁美理事を座長に調査口述1件、論文口述1件、さらに高橋則英副会長を座長に調査口述1件、論文口述2件の計7件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び概要は以下の通りです。
1.調査口述「欧米諸国における写真の現状および、美術教育の現状」
  写真家 川島 崇志
スイス、オランダ、アメリカなどの写真、美術教育の現状報告とアクティブラーニングの現在と今後の展開などを日本の現状との比較も含めた発表をされました。
2.作品口述「写真表現における芸術性について─創作活動を通して─」
  洋画家 創作写真家 管家 令子
自作の「女R-I」「女R-II」の発表と制作を通して考察された、制作者の思考と感情の表現の在り方を体系的に解説した発表をされました。
3.調査口述「日本電報通信社の幻のニュース写真発見・続編」
  ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
ライト兄弟の初飛行、ツェッペリン号、初期の日本の女性飛行士など航空関連の歴史的な写真やスポーツ、社会的な時事写真など昭和初期の日本の状況を伝える貴重な写真による発表をされました。
4.論文口述「アマチュア写真家から営業写真師へ」─大阪の「小川月舟写真場」の事例を中心として─
  大阪芸術大学大学院芸術研究科博士後期課程 李 京彦
1918年から大阪で営業写真師として活躍し、アマチュア写真家(芸術写真家)としての作品も多い小川月舟の「写真場」に残された資料を中心に制作スタイル、教育や文筆などを考察した発表をされました。
5.調査口述「明治三陸津波を記録した写真師たち」
  共同通信社写真データ部 沼田 清
1896(明治29)年の明治三陸津波の直後に現地で撮影された写真と撮影者、発表媒体やその活用までを克明に調査、解明した発表をされました。
6.論文口述「19世紀フランスにおける写真とコレクション性をめぐって─人物写真から絵画複製写真へ─」
  日本学術振興会特別研究員 打林 俊
写真術の発明以降、フランスでの写真コレクションが肖像写真から絵画複製写真まで広がっていく過程を、アメリカの視覚文化と比較し考察した発表をされました。
7.論文口述「写真の印象を支配する要因」
  千葉大学 小林 裕幸
写真から受ける印象を視覚と認知科学の観点から、多くの具体例を提示、検討してそのメカニズムを解明した発表をされました。
研究発表の後、「絵画に焦がれた写真─日本写真史におけるピクトリアリズムの成立」(2015年/森話社)の著述に対して日本写真芸術学会学術賞を打林俊さんに授与いたしました。
年次大会終了後、会場を大学食堂プレイスへ移して懇親会が催されました。
上田耕一郎理事の司会進行により和やかな楽しい会となりました。
学会創立25周年という節目の年に開催された年次大会は、新たなそして多くの学識に接することができた場になりました。このような貴重な機会と会員の交流の場として、今後も益々発展していく必要があります。今秋に予定されているプリントセミナー・シンポジウム(仮称)や関西支部の活動などと共に多くの皆様が次回の大会に参加してくださることを願っております。

(文:実行委員長 田中仁、写真:土居原翔司)

 

第3回関西写真研究会報告
日時:2015年10月10日(土)13:30〜16:30
会場:ビジュアルアーツ専門学校大阪新館3階アーツホール


当学会では学会の活動の啓蒙と研究活動の活性化のために「関西シンポジウム」を連続して開催していますが、より充実した内容への足固めとして「研究会」を開いております。本会はその三回目で、『日本からみた韓国の写真史といま』と題し、10月10日(土)の午後に大阪市内で開催し、31人の参加者がありました。ちょうど今年は日韓国交正常化50周年を迎え、写真分野における日韓の交流は以前にも増して活発に行われています。また、犬伏雅一理事が監訳した『韓国写真史』(青弓社)が今年刊行されたことは、韓国写真史を日本語で読むことができるばかりか、日韓の歴史を顧みると、同書は日本の写真史の空白を埋める貴重な文献となる可能性があります。そこで、韓国の写真をキーワードにして、関西在住の各理事とともに表題の研究会を企画しました。
内藤 明会長による開会の挨拶のあと、一人目の発表は犬伏理事の『日韓写真史の交差』で、そもそも写真史というものが一国主義で成立するかという提議のもとに、韓国写真史を日本でどう捉えるべきか、さらに今後の日・韓の写真を研究するにあたっての課題について言及がありました。二人目の発表は、大阪府出身の写真家でアーティストの金 仁淑 氏の『韓国のアーティスト・イン・レジデンス ─私の体験などから』と題した報告で、韓国の写真文化、特に韓国におけるアーティスト・イン・レジデンスの系譜についての発表でした。1970年代に発祥したオルタナティブ・スペース(非営利の制作・発表の場)が、やがて企業が運営するものへと移行し、国立の美術館が運営するものへと発展したことは日本と比較して羨ましい環境であると感じられます。また自身の経験から、その選考基準や運営方法、社会的評価などの利点と問題点などが紹介され、興味深い発表となりました。三人目は、李 受津 氏(大阪芸術大学大学院芸術研究科修士課程2年)による『韓国現代写真の今 ─若い作家とその傾向』と題する発表でした。韓国の20代から30代の若い写真家たちがSNSなどから大きな影響を受けていること、その上の30代から40代の写真家たちは社会性を意識しつつ、写真の可能性を追求する傾向にあるという分析が発表されました。さらに、作家を取り巻く環境に触れ、韓国社会では「才能寄付」という言葉が流布しているが、一部で若い才能が搾取されることも危惧されるという指摘もありました。本会は研究会であるために座談会を設けませんでしたが、各々の興味深い発表内容に参加者は熱心に耳を傾け、多くの質問が出て、充実した研究会になりました。今後もこのような研究会が継続して開かれ、各理事ならびに会員の協力を得て「シンポジウム」の開催へと発展することを期待したいと思います。
末筆ながら、本会の会場を提供を頂いたビジュアルアーツ専門学校大阪に御礼を申し上げるとともに、会場案内の設置から記録に至るまでを協力をいただいた村中 修理事に感謝致します。

(文:吉川 直哉/写真:村中 修)

 

平成27年度第24巻・第2号学会誌の休止について
学会誌〈平成27年度−第24巻・第2号−〉の休止について
日本写真芸術学会 会長 内藤 明

本年12月中旬に発行を予定しておりました学会誌〈平成27年度−第24巻・第2号−〉につきましては、申し込み期日である9月末日の時点で、投稿数は1件のみでした。
このため、論文1件のみでも学会誌を予定通り発行すべきかどうか理事会において慎重審議を行いましたが、学会誌としての体裁や費用等の問題もあり、今回予定しておりました巻号の学会誌はやむを得ず休止とさせて頂きました。なお今回の投稿論文は査読審査を進め、次号に掲載を繰り延べさせて頂く旨、投稿者のご了承は頂いております。
理事会では現在、次年度創立25周年を迎える学会の会勢拡大のため、様々な施策の検討も行っております。学会が発展し、その存在意義を高めていくためには、会員各位また会員相互の活発な研究活動が不可欠です。平成4年から発行を継続してきました学会誌は、そのような会員の方々の主要な研究発表の場として重要な媒体です。さらなる学会の発展のため、ぜひとも多くの会員の方々の積極的な学会誌への研究成果投稿をお願いする次第でございます。

 

学会NEWS No.69より
平成27年度日本写真芸術学会年次大会報告

 平成27年度日本写真芸術学会年次大会が、6月13日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午後1時より通常総会、午後2時より研究発表会、午後5時15分より学会賞授与式、午後5時30分より懇親会が開催されました。
 通常総会は内藤会長が議長をつとめ、内藤会長より上田 耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項ではまず佐藤英裕理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事11名、評議員4名、監事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
 研究発表は上田耕一郎理事を座長に調査口述1件、論文口述1件、また高橋則英副会長を座長に論文口述1件、調査口述1件、さらに鈴木孝史理事を座長に論文口述2件の計6件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び概要は以下の通りです。
1.調査口述「ユーモア写真の面白さ」 ゆうもあくらぶ 石黒敬章
 日本では評価の低いユーモア写真について、「ゆうもあアートコンテスト」に応募のあった作品の中から、「頭をほぐし 目を奪い 舌を巻く そして胸を打ち 腹に響く 腰の入ったもの」をご紹介いただきながら、ユーモア写真の素晴らしさについて発表されました。
2.論文口述「デジタル写真の時代、営業写真館に起こった変化 関西地域の3人の写真師を中心として」大阪芸術大学大学院芸術学研究科 李 京彦
 写真の普及に大きな役割を果たした写真館が、デジタル写真時代の始まりによって経験した変化がなんだったのかを三人の写真師の対応をもとに考察し、写真史の中でデジタル写真時代がもたらした変化の一面について発表されました。
3.論文口述「日本における写真展覧会の史的研究−1956年〜1970年(高度成長期)を中心として−」 日本大学大学院芸術学研究科 侯 鵬暉
 社会に記録や表現という様々なメッセージや写真の魅力を伝える重要な手段である写真展覧会を、日本における発展とその変遷の観点から分析され、今回は高度成長期の15年間における時代感覚と写真観の変化を読み取り、写真展の展示会場や傾向についての考察を発表されました。
4.調査口述「日本電報通信社の幻のニュース写真発見」 ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
 1989年に電通で発見された、敗戦直後に全て焼却処分されたと思われていた同盟通信社のアルバムの中にはなかった昭和8年の報道写真アルバムというという貴重な資料をもとに発表されました。
5.論文口述「初期日本ファッション写真の歴史研究−黎明期を中心に−」 日本大学大学院芸術学研究科 細川 俊太郎
 近年、欧米で写真芸術の一分野として認められつつあるファッション写真という分野について、日本でのファッション写真のごく初期である1930−1940年代の動向を堀野正雄と福田勝治の写真などから考察し発表されました。
6.論文口述「細江英公の写真におけるクィアな身体の政治性」 ニューヨーク州立大学バッファロー校大学院芸術科 長妻 由里子
 細江英公氏の作品から「鎌鼬」と「シモン 私風景」を取り上げ、公の場所で身体が表現された作品としての共通性とその政治性について考察され、クィアな身体の表現とイデオロギーの構造自体を問いただしているという点について発表されました。
 研究発表の後、学会設立より長年にわたる理事として学会運営への貢献並びに写真界に対する多大な功績に対して日本写真芸術学会功績賞を池田陽子評議員に授与いたしました。
 年次大会終了後、場所を芸術情報館3階会議室へ移して懇親会が催されました。上田耕一郎理事の司会進行により和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
 年次大会は新しい学識に接することができる貴重な機会であると共に、研究者同士の交流の場として、益々意義のあるものに発展させていかなくてはなりません。学会誌とは違った形で学会参加への意義を感じていただける場として、次回もより多くの皆様が参加してくださることを心より願っております。
(文:秋元 貴美子、写真:篠田 優)

 

学会NEWS No.68より
第2回写真研究会のご案内

第2回関西写真研究会のお知らせ

日時:2014 年12 月23 日(火祝)14:00 〜16:00
会場:京都造形芸術大学大阪サテライトキャンパス
   大阪市北区小松原2-4大阪富国生命ビル5階
   http://www.kyoto-art.ac.jp/info/about/access/osaka/
内容:「安井仲治/家族の証言」

ご子息の安井仲雄さんをお迎えして、家族からみた安井仲治と作品についてお話いただきます。
安井仲雄さんは浪華写真倶楽部(1904年創立日本最古の写真倶楽部)の会員でもあり、
戦後から現在までの関西の写真倶楽部の動向なども伺いたいと思います。

司会:田中仁(京都造形芸術大学)
申し込み不要
問い合わせ先: 日本写真芸術学会事務局
       TEL. 03-5995-8858 FAX. 03-5995-4721
       東京都練馬区旭丘2-42-1 〒176-8525
(当日の連絡先)
京都造形芸術大学大阪サテライトキャンパス
もしくは
E メール:jintaro-jsahp@memoad.jp

 

第16回関西シンポジウム中止の経過報告
第16 回関西シンポジウムの開催中止について

10月13日(月祝)に大阪梅田(京都造形芸術大学サテライトキャンパス)で開催予定でした第16回関西シンポジウム「関西における写真の現在」は台風のため中止いたしました。
大型の台風19号が近づいていたため、関西地区では大荒れの天候が予想されていました。参加申込者には、開催に変更があるかも知れないことと、当日の緊急連絡先を連絡しておりましたが、前日の12日13時過ぎにJR西日本が異例の「13日の16時より管内在来線の全面運休」を発表したこともあり、中止を決定しました。交通機関の運休や乱れにより講演者/参加者が帰宅できなくなる可能性、会場が大学施設であるため荒天時の休講閉鎖も予測されたので、前日の夕方での判断としました。
当日、午前中に数件の開催に関する問い合わせ連絡があったことと、開催予定時刻には会場に担当者が待機していましたが、来場者もなく混乱することはありませんでした。その後、協議しましたが講演者と会場の調整がつかないために、今年度の開催は正式に中止としました。

(文:田中仁)

 


学会NEWS No. 67より
平成26 年度日本写真芸術学会年次大会報告
平成26年度日本写真芸術学会年次大会が、6月7日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午前11時より通常総会、午後1時30分より講演、午後2時20分より研究発表会、午後5時30分より懇親会が開催されました。
通常総会は内藤明会長が議長をつとめ、内藤議長より秋元貴美子理事が書記に指名されました。報告事項ではまず上田耕一郎理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事11名、評議員7名、監事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
講演は6月2日から8月3日まで写大ギャラリーで写真展を開催中の、インディアナ大学教授で写真家のオサム・ジェームス・中川氏による「沖縄─ GAMA/BANTA/REMAINSについて」が行われました。研究発表会は高橋則英副会長を座長に論文口述3件、また吉田成副会長を座長に論文口述2件の計5件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び
概要は以下の通りです。

1.論文口述「明治時代のヌード写真」 ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
日本の明治期のヌード写真について、日本でのヌード写真の開祖と思われる下岡蓮杖、横山松三郎など日本写真草創期の写真師のヌード写真に対する状況、明治期のヌード写真に見られる様々な特徴による分類等について、貴重な収集資料をもとに発表されました。

2.論文口述「金丸重嶺写真壁画に関する一考察 ─ニューヨーク万国博覧会と撃ちてし止まむ─」 日本大学芸術学部研究員 鳥海 早喜
写真家金丸重嶺の代表作の一つである1943年作の写真壁画「撃ちてし止まむ」について、前段階としてニューヨーク万国博覧会に出品された1940年の写真壁画「現代日本生活」の制作過程及びその背景と、撮影者である金丸の視点を通して、金丸重嶺の作品傾向や日本写真史における役割の重要性に関する考察を発表されました。

3.論文口述「日本写真展覧会の史的研究 ─特に戦争直後の10年間を中心として(1946〜1955)」 日本大学大学院芸術学研究科 侯 鵬暉
1946年から1955年の日本における写真展を、『アサヒカメラ』誌など写真雑誌を資料としてその時代背景、展示回数、展示会場、展示方法、作家構成、テーマ等から分析し、戦後10年間における時代感覚、写真観、写真展の傾向等について発表されました。

4.論文口述「芸術写真の〈地方〉における展開 ─金沢写友会の活動をめぐって─」 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 若山 満大
大正期の日本における芸術写真の展開、特に地方のアマチュア写真家の活動の具体相を、金沢写友会の活動に着目してその活動実態を通して明らかにするとともに芸術写真の展開における〈中央〉と〈地方〉の相関関係について発表されました。

5.論文口述「写真家・村井 修の視線と構成」東京工芸大学写大ギャラリー 堀田 文
建築写真家である村井修の活動を、作品集、記事、本人へのインタビュー等を通して振り返り、村井が写真家としてどのような姿勢や視線を持ち、表現活動を行ってきたかについて発表されました。
年次大会終了後、場所を大学食堂プレイスへ移して懇親会が催されました。
池田 陽子理事の司会進行により和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
年次大会は新しい学識に接することができる貴重な機会であると共に、研究者同士の交流の場として、益々意義のあるものに発展させていかなくてはなりません。学会誌とは違った形で学会参加への意義を感じて頂ける場として、次回もより多くの皆様が参加して下さることを心より願っております。

(文:佐藤 英裕、写真:辻本 健馬)

 

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